すばらしき世界
殺人事件で服役していた人が出所するが、出所した世間でも、一本気な性格からなかなか対応できない。その主人公を役所広司さんが演じた映画が「すばらしき世界」。
当然、メイクの力もあるとは思うのだが、役所広司さんが演じた主人公の造形が素晴らしかった。硬直気味の性格など内面や喜怒哀楽が本当によく表現できていた。若い役者には時代の花があるが、本当の花は、役所さんのように長年演者を続けてきて培った真実の花だ。役所さんの好演には本当に感動して嬉しかった。
そういう意味で脇役たちも素晴らしい映画だった。身元引受人の弁護士さん、その奥さん、スーパーのオーナー、区役所の生活保護課の人、九州のやくざの親分、その姐さん、ソープ嬢のリリーさんなど脇を固める人たちが素晴らしいと映画に一層リアリティが出る。美男美女だけでは映画は成り立たないし、真実味に欠ける。
監督の演出も光っているし、細部にこそ真実が宿っていた。特に、最後に主人公が雨中にアパートに戻ってきて、洗濯物を取り込むが、一枚だけが取り込まれないで残っている場面。象徴的で映画に現実味を与えていた。要は安っぽい作り物と感じさせないいい映画だったし、社会的な問題提起もしっかりしている映画だった。

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