UA-92533382-1 ナワル・エル・サーダウィ著「イヴの隠れた顔」: よつば農場便り

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2021年1月 8日 (金)

ナワル・エル・サーダウィ著「イヴの隠れた顔」

ナワル・エル・サーダウィはエジプトの女性作家だ。彼女の著作「イヴの隠れた顔」は、アラブ社会における女性の抑圧を告発している。私がこの著作を読んで、斬新だと思ったのは、女性の地位が低いことを、主に西洋のフェミニストは、イスラム教のせいにしているが、サーダウィは、イスラム教は女性に対して抑圧的な宗教というわけではなく、コーランに登場してくる女たちは、むしろ生き生きと自分のやりたいことを追求していたということだ。

 

では、何が女性を抑圧しているかということだが、それは、資本主義的生産様式と父系制社会だ。

 

もう一つ斬新だと思ったことは、題名にも登場してくる「イブ」の考察だ。イスラムはユダヤ、キリストと宗教の根源を一つにするが、ユダヤの天地創造説と失楽園伝説も共有する。この神話の通常の解釈は、アダムのあばら骨から創造されたイブは、アダムをそそのかして、神に禁じられた知恵のみを食べさせた、悪ということになっているが、サーダウィの解釈は、そうではなく、愚鈍でのろ間なアダム(=男)は、賢く行動力のあるイブ(=女)に、唯々諾々と従うしかなかった、ということだ。

 

このように、知恵にも勝り、様々な面で、男性を凌駕する女を心底恐れたがゆえに、父系制社会を取るようになった社会の男たちは、激しく女性を抑圧するようになったというのだ。「恐れ」と「憎しみ」は、同一の人間心理の両面だということだ。

 

「イヴの隠れた顔」は、1988年に、日本語への訳書が刊行された。取り扱われている内容の1800年代から1960年代くらいと、今となっては、かなり昔のことに属することを取り扱っているのだが、しかし、その内容は色あせない。むしろ、現在の日本社会の女性の置かれた状況を考察するのに、良く当てはまるようなことがたくさん出ている。家族の一体感が壊れるので、夫婦別姓は許さない、という与党政治家は、本書に書かれた女性を抑圧するあらゆる保守的な男性たちと、発想が全く同じだ。

 

女性が不幸であれば、結局は男性も不幸になる。日本社会は、女性に抑圧をかけ続けて、資本主義的生産・消費・分配制度と父権主義的社会を維持しようとしているが、女性が子供を産むことを拒否するという反応で、女性がそれにこたえていることにより、社会そのもの維持も危うくなっている。そう、女性の抑圧と社会の維持は決して同時に行うことはできないのだ。女性の性の解放こそが、新しい社会への道だ、というのが、サーダウィの主張だ。

 

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