UA-92533382-1 認知のゆがみ: よつば農場便り

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2020年2月 7日 (金)

認知のゆがみ

先日、安倍首相の国会答弁が都合よく切り取られたものをNHKのラジオニュースで聞いた。彼は、自衛隊の駆逐艦が中東に派遣されるのを見送りに行ったときに、「自衛隊は憲法違反だ」とプラカードを掲げて抗議する人たちを見て、これはむごい、自衛隊を憲法にぜひ明記しなければならないと、改憲への誓いを新たにしたということだ。

安倍さんは、計算してこういう発言をしているのではなくて、本心からこう言っているのだと思う。安倍さんには、世界が私たちとは違って見えるので、そこから導き出される結論も違うのだ。同じものを見ているはずでも、人間の物事を捉える認知機能はそれぞれ違うし、影響を受けたり歪められたりする。

駆逐艦派遣の出発の際の、客観的世界は、「安倍さんが憲法を無視して、米軍と協力できるよう安全保障の在り方を勝手に変えてしまった。それに基づき大事な自衛隊員を中東に派遣する、しかも国会で彼らの安全性などをしっかり確認・議論もせずに。そのように自衛隊が中東に派遣されることが憲法違反なのであり、安倍さんのこれまでの存在ややり方が憲法違反だ」という抗議なのだ。

だが、安倍さんだけが認知のゆがみを持っているわけではない。安倍さんを支持し支える強力な力を持ったグループの人たちも、みな同一のバイアスがかかった認知の仕方をしているのだ。彼らから見れば、自衛隊員の海外出発は、「お国のために己を犠牲にして海外に出向く人たちが、港で家族との悲しい別れをしている。この厳粛で美しい光景に、彼ら自衛隊員の存在を汚すような発言や行為は許されない」というものだろう。

だが、そもそも自国のためというより米国の国益のために、大切な自衛隊員を危険にさらすようなことをせず、もっと自国の国益を追求する、つまり自衛隊員の命を守る方策を考え、極力戦争に巻き込まれないことを画策すれば、こんな悲しい家族の別れという場面はそもそも起きないのではないか。やはり安倍さんたちは単に「血を流す」ということを浪漫的なことと考えて憧れているだけなのではないだろうか。

安倍さんや彼を支持する人たちの認知では、対アメリカ戦争の特攻攻撃も、国家のために自ら若い命をささげた「散華」という名の浪漫的なものになる。そもそも、人間ごと体当たりするなんていう無茶な作戦を指導者が考えなければ、隊員たちの苦悩も家族との悲しい別れもなかったはずではないだろうか。アメリカ艦隊に打撃を与えるだけであれば、爆弾を投下したほうがよほど加速度がつきアメリカに打撃を耐えることができたはずなのに、そういったそもそもという事象や戦争指導者の責任を一切捨象して、隊員たちが意を決して死ぬとわかっていても愛する人を後にして飛び立つという場面だけを取り出して、そこを神々しい美談に仕立て上げるのはそれこそ、亡くなった方々に対する冒とくだ。

こういう認知のゆがみは、薩長藩閥明治政府が作った「神話」を安倍さんが引継ぎ復活させようと、もしくは安倍さんを担いで復活させようとしているものだ。薩長藩閥明治政府に逆戻りというのも笑い事ではない。そういう危機感を持っている。

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