『老子―もう一つの道』 七十九 怨みと天の道
【自由訳】
大きな怨みある当人どうしを取り持って、なお怨みが残るようでは、よい仲裁とは言えない。聖人は、他人に貸していても、その返却を求めない。それは天の道にも通じる。天には依怙贔屓はなく、常に善人の見方である。
【解説】
「天は常に善人に与(くみ)す」と聞くと、親鸞の善人なをもて往生をとぐ、いわんや悪人をや、を思い出す。親鸞の方は、仏は悪人こそを導きたまうと言ったのであるが。
さて、怨みを消すことはできるのだろうか、争った人間どうしの和解はあり得るのだろうか。老子が提出している問題意識は、きわめて現代的でもある。そして、この人間社会ではいまだに解決されていない問題である。
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