UA-92533382-1 地獄門: よつば農場便り

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2019年6月30日 (日)

地獄門

女優の京マチ子さんが亡くなった。晩年は、私生活を明かさないミステリアスな生活を送っていたという。その京マチ子さんを追悼して、主演映画の特集が、仙台フォーラムで行われた。

 

京マチ子さんの映画と言えば、黒澤明監督の「羅生門」、そして溝口健二監督の「雨月物語」だ。私はこの2作品だけを見ていて、京マチ子さんと言えば、時代劇の印象が強い。この2作品、ともに外国の映画祭で高く評価され、そこには、京マチ子さんの、ヨーロッパの人が思う、典型的な東洋美の不思議な日本女性が描かれているのかなと思う。

 

追悼作品が連日上映された中で、私が見たのは衣笠貞之助監督の「地獄門」。題材は平家物語からとられている。清盛一行が厳島参詣しているあいだに、都では反・平氏の反乱がおこる。都に残り警備していた平家方の武士は、上皇や上皇后を何とか難を逃れさせようと、身代わりを牛車に載せ、反乱した源氏方の武士を追わせて、時間を稼ぐ。身代わりに立った女官が、京マチ子さん演じる「袈裟御前」。警固していた盛遠が、何とか袈裟を救い、盛遠は袈裟を見初める。清盛ら兵士一行は、急いで都に帰り、反乱を鎮圧する。論功行賞の中で、盛遠は清盛に、恩賞として「袈裟」を所望する。しかし、今朝は実は人妻だった…という話で、最後は袈裟が死んでしまうという悲劇なのだ。

 

この映画、光の使い方や演出など、京マチ子さんを美しく見せる趣向が際立っている大変美的な映画だ。それに、京さんは、不思議な東洋美の女優さんというだけでなく、表情、仕草など、一流なのだなと改めて感じる。それにしても、盛遠が、一方的に袈裟に恋慕して、思い込みから最後に殺めてしまうのは、現代のストーカーによる悲劇と何ら変わらず、暗然たる気持ちになる。しかし、最後は平家物語らしく、無常を感じた盛遠が出家して終わる、ということになるのだが、出家して済まされる話ではなかろうと、もし本当にあったとしたらこの理不尽な「死」をどう割り切ればいいのかと、そんなことを考えた映画だった。

 

 

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