『老子―もう一つの道』 五〇 生死
【自由訳】
生から死へとおもむくこの決定的な時に、生きることのできるもの、死んでしまうもの、その分かれ目は何か。生を貪り、豊かにしようとすれば死ぬ。節制をして質素に生きれば死地はない。
【解説】
「生を出でて死に入る」ことを語っているが、「死を出でて生に入る」ことも同じである。生死は表裏一体で、その差は紙一重であるが、ここで老子は生に入るための要諦を説いている。老子流に行けば、求めるものを求めないこと、これが肝心だ。すなわち、生を求めるのが人情であるが、生を求めないことで生を得るのだ。(しかし、天災・人災・戦争など古代中国(そして現代の世界)を襲った苛酷な運命からも、老子の心得があれば、逃れることができたのだろうか。老子の教えは単なる養生法なのか。われわれは常に目前の生を、求めずして一瞬を生きているのである。)
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