UA-92533382-1 『千年の愉楽』 中上健次: よつば農場便り

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2019年3月18日 (月)

『千年の愉楽』 中上健次

中上健次の最高傑作との誉れ高い『千年の愉楽』を読む。この傑作を日本語で読めた幸せをかみしめている。近代的な意味での直進的に進む時間概念が、この物語にはない。過去も・現在も・未来もすべてが同時に存在し、かつ円環していく時間を背景に、生と死も別々に分かたれているのではなく、生き、死に、生き、死にの境がなく、生者と魂の境もなく、人間と自然との境もない。

 


象徴的な人物は、「路地」の赤んぼすべてを取りあげた、取り上げばばであり語り手である「オリュウノオバ」とその夫で、路地の死者を見送るその夫であり毛坊主である礼如さん。生と死の象徴なのだが、この物語では圧倒的に生が強い。

 


しかし、主人公の男たち中本の血を継ぐ若き男たちが皆若くして死んでしまう。それは、何代か前の祖先が犯した罪の償いをしているようでもあり、姿かたちにどこか高貴なものを漂わせたものが非業の死を遂げていく姿は、どこか「貴種流離譚」のような趣を感じさせる。

 

「路地」とは被差別部落を背景としているのであり、この物語は、朝鮮人たちやアイヌの人たちも色濃く登場してくる。皆、この日本では差別を受けている人たちだ。しかし、差別を受けているということが、かえって彼らの高貴で、美しい姿態を証しするようで、この物語は得も言われぬ読みごたえを与えてくれるのだ。

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