UA-92533382-1 自動人形の城: よつば農場便り

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2018年12月25日 (火)

自動人形の城

これは、川添愛さんの作品。読んで思ったことは、「後生、畏るべし」。どういうことかというと、自然言語処理という学問の専門分野でも、そして小説・文学作品である本作と言い、これほど知識や才能ある人に感心せざるを得ないということだ。私は、川添さんよりも年上だが、でもそれが何?長く生きているだけで、何も取り柄がないと、若くて才能がある人が本当にすごいと思う。でも、若い人が活躍してくれれば、日本も心配ないのかなとも思う。年長者がすべきなのは、無駄な口をさしはさまないということだろうか。

 

本作の中で読んでドキッとした言葉あった。川添さんが登場人物の口を借りてこう言わせている。

 

「私は大人になってから、ある程度の地位を確立した大人の中に、新しいことを一切学ぼうとしないものがいることに気づいた。彼らは自らの権威を振りかざして新しい知識の価値を貶め、徹底的に拒否する。彼らは学ばないことを正当化する。それは他人に対する弁明のみならず、自分に対する弁明でもある。つまり他人にも自分自身にも、自分がなぜ学ばないのか、なぜそれが許されるのかを言い聞かせるのだ。しかし彼らが何を言おうと、彼らが学ばない本当の理由は一つしかない。今いる場所から逸脱したくないという「恐怖」だ。つまり、安全な、居心地のいい場所から出たくないのだ」

 

これは、作者の川添さんが自分の研究生活や社会人としての経験の中で自ら感じたことではあるまいか。権威なき大人としての私は、せめて死ぬまで新しいことを学ぼうと思う。というわけで、自然言語処理を学ぼうと思い、川添さんの書籍にお世話になっているのだ。

 

「自動人形の城」は物語になっている。自然言語処理研究がもとになっているということに読んで気付かないだろうし、それに興味がなくても、作品として楽しく読める。というか、伏線やどんでん返し、犯人捜し的な面白さでやめられなくなって、最後がどうなるのか読まずに寝るには惜しくなり、夜更かしして読んでしまった。

 

舞台は、中世のヨーロッパ風の物語。王族や魔法使いや宗教指導者たちが登場する。自動人形がお城に満ちるおどろおどろしさ。表紙のデザインは、いかにも黒魔術やその手の本のようで、大のおじさんが手に持って闊歩するような本でない。この見た目で、これが「東京大学出版会」の本というのも驚きだ。きっと「出版会」にも、若き感性を持ち、変わることを恐れない優秀な編集者がいるのだろう。やはり「後生、畏るべし」


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