UA-92533382-1 働きたくないイタチと言葉がわかるロボット: よつば農場便り

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2018年12月12日 (水)

働きたくないイタチと言葉がわかるロボット

この衝撃的ともいえるタイトルからこの本が、人工知能やコンピューターの自然言語処理を扱った本だとわかる人がどれだけいるだろうか。「なんの本?」と手に取って見たくなる気にさせるうまいタイトルだ。実際、自然言語処理という本当は専門的な内容を扱っているにもかかわらず、2017年に1刷りが出たと思ったらすぐに3刷りと、人が手にとって売れているのだ。

 

作者の川添愛さんは、研究者だ。略歴を拝見すると文学部から入り、言語学へと造形を深めていき、現在は人工知能に関連する自然言語処理を研究しているようだ。文学から入ったというところが、人にわかりやすく、興味を持ってもらえるような筆運びとなって、この本を楽しく読めるようにしているのだろう。

 

自然言語処理をめぐる問題を、一般の人にわかりやすく伝えるために、イタチたちが、言葉が何でもわかって、自分達の命令通りに何でもやってくれるロボットを作ろうとするという寓話に託してお話してくれる。イタチたちが、目標を達成するために、他の動物たちの村をあちこち行って面白おかしくロボット作りをするという話が飽きさせない。

 

私自身は、第2言語を人はどのように処理するのかというまじめな興味からこの自然言語処理の概要を教えてくれるこの本を読んだ。そして、人間が自然に何気なくできているようなことが、実はコンピューターに教え込もうとすると大変なことであるという点に興味を持った。私自身、グーグルの音声認識入力や自動翻訳を使っていて、以前と比べて精度の向上に目を見張っている。しかし、完全に人間の言葉や意図を理解する機械を作るのは大変そうだということが分かった。

 

しかし、母語以外の言葉を学習している人間も、人間から言葉を習っているコンピューターと似ているのではないだろうか。知らない言葉の意味である、辞書をなるべく多く脳内に持ってないと外国語は読めないし、母語でない言葉の羅列でできた文は、どこで区切ったら良いのか?そして、区切るところにより意味が何重にも生じるので、いったい何を基準に意味を特定すればよいのか?これは、イタチたちが言葉がわかるロボットを作ろうとして四苦八苦している様に似ている。

 

川添さんの解説は具体例がわかりやすくていきいきとしている。曖昧な言葉の例としてこういう言葉を挙げている。「皆さんが生き生きと活躍できる社会を目指します」。ぼんやりしているけどよさそうな言葉が多くて、聞いた人が自分にとって良いことばだという印象を持ってしまう言葉の例だ。本当は、「皆さん」というのが「一部のお金持ち」だったり、「生き生きと活躍できる」が「国から何のサービスも受けずに自力で」という意味だったり、「目指します」が「実現できるかどうかはわからない」という意味だったりするかもしれないが、真偽を問えない形にしてしまえば都合がよいというのだ。しかし、コンピュータには、全部真偽が問える形で教えてやらねばならない。そもそも、そういう言葉の真偽が読めない国民が多いということ自体が問題ではないだろうか。人工知能の研究は、結局人に返ってくるというところが面白い。


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