『老子―もう一つの道』 五 多言は無用
【口語自由訳】
この天地は、まことに無情であり、天地の間にある万物は天地からは捨てられ顧みてもらえないかのようである。それでも万物が移ろい行き、歴史が進展していくのは天地がまるでふいごのようであるからであり、もうこれ以上の余力が残っていないだろうと思われるほど極まってしまっても、それで終わりではなく、動けば動くほど力はみなぎり、いよいよ万物も人間の世も、ともに推移していく。
このような天地の間の推移とは違い、人間は言が多くなれば極まるものである。沈黙を守るのが良い。
【解説】
多言は無用ということである。沈黙の尊さ、沈黙の中に込められた微妙な意を探り味わえということ。
無情とは、よく私たちが受ける印象である冷酷・無残といったこととは違う。行って、行って、顧みることなきこと、これを無情という。宇宙を貫く原動力たる法則は、無情であると老子は言う。そして、それは、私たちの常識とは異なり、行き詰まり萎えて終わってしまうことはないのだという。永遠に動いてやまないもの、それを心に思い描いてみよということ。
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