無料ブログはココログ

« 地域に住んで思うこと | トップページ | 弱さを認める »

2018年6月10日 (日)

読書ノート『第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法』村野井仁(大修館書店、2012)

この本を読んだのは、自分の仕事に役立てようとの動機からだ。そして読んでみたら著書の先生が、私の家の窓からすぐそこに見える大学の先生だったということだし、登場してくる大学生たちもその大学の学生さんたちだったということで親近感もわいて、楽しく読めた。

 

『第二言語習得」という学問分野は、人がどのように母語以外の言語を習得するのか、そのプロセスや、うまく習得できたり、できなかったりする要因を研究するものだ。「第2言語習得」研究で明らかになったことを、教室での外国語学習に適用すれば、効果的に学習できると考えて、村野井氏が、実際に教室で教えている実践例や効果的な外国語学習法を紹介しているものだ。同業者や同じ業界のものにはとても参考になり、自分でもやって見たいと思わせる。

 

外国語学習に限らないだろうが、学習に成功するかどうかの大きな要因に「学習の動機づけ」がある。もちろん動機づけの高い学習者、つまりやる気のある人が成功しやすいのは言うまでもない。教師の役割は、学習者に、内発的で自ら学習したいという意欲をどうやって育てるかだ。

 

外国語学習の動機づけには「統合的動機付け」というものがある。それは、例えば、アメリカ人のピカピカの物質的生活がまぶしく、ドラマで見るあのアメリカ人のようになりたい、だから、彼らのしゃべっている言語をしゃべり、自分も彼らと一体になりたい、というような日本がまだ貧しかったころに見られるような動機付けだ。アメリカの物質的富がピカピカに見えなくなった今でも、あの憧れの外国人と同じようになりたいという統合的動機付けは、ネイティブスピーカーの発音を至上として、そこに近づき一体化しなくてはいけない。

 

しかし、日本の英語教育はそこを目指すべきでないという村野井氏の提案や考えこそが、この本を読む価値があるようにさせている最大のところだと私は思った。日本人が目指すのは「日本人英語」だ、というのに私は賛成だ。

 

まず、現代の英語はアメリカ人やイギリス人のものではない。国際的なコミュニケーションのための補助語なのだ。それを学べば、国際的なコミュニケーションが取れ、環境問題、格差問題、差別問題、歴史問題といった地球規模の課題を一緒に考え行動することができ、韓国人と日本人が話し合ったり、中国人と日本人が話し合ったりするのを介することができる国際補助語なのだ。だから、インド英語、シンガポール英語、イラク英語があり、日本英語もあっていいわけだ。そして、このように考えると、自国の文化やアイデンティを捨てなくてもいいという利点がある。むしろ、しっかりと自分のこと、自国の文化のことや歴史をきちんと知るという土台が求められることになるのだ。

 

村野井氏は、緒方貞子さんやダライ・ラマ、チェン・カイコー映画監督がインタビューされて英語で答えているビデオを学生たちに見せると、学習に対する意欲が増すと言っている。学生たちは、ネイティブのように完璧な発音で話すことが大事でなく、中身のあることを自分の言葉で伝えることが大事だと気づき、だから英語を通して中身のあることを学ぼうと動機づけが高くなるのだそうだ。

 

もう一つ「日本人英語」の良さは、これが、世界の英語たち、つまりインド英語や、シンガポール英語や、アメリカ英語、イギリス英語だったりといったものと、等距離にあるという点だ。もし、アメリカ人と一体となりたいという「統合的動機付け」で英語を学んでしまい、アメリカ式で発音しそれを国際社会で話したら、反発を受ける恐れがある。世界には、アメリカに対して反発を感じている人や国々が多いから、アメリカ人と一体とみられるのは日本人を悪い立場に置く。「日本人英語」は、日本人の国際的な位置を現わしているし、日本人が国際社会で果たすべき役割を表していると思う。民族間対立などの世界的な課題を解決したいと思っている若い人は多いはずだし、第2言語を学んで、視野を広げ、「自分たちが一番だ」という偏見を持たないようにするためにも外国語学習は重要な教育だ。その点を強調している村野井氏の著作を、業界以外の多くの人にも読んでほしい。

 


にほんブログ村

« 地域に住んで思うこと | トップページ | 弱さを認める »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/197245/73656739

この記事へのトラックバック一覧です: 読書ノート『第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法』村野井仁(大修館書店、2012):

« 地域に住んで思うこと | トップページ | 弱さを認める »