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2018年3月 7日 (水)

最低所得保障制度

さて、前回から引き続き考えを進めていこう。たとえば、なぜ「過労死で死ぬまで働かせられるのに、そういう法制度を、都合のいいようにデータを改ざんしてでも推進するような、政権や首相が人気があるのか」ということを考えていた。よく言われるように、国民は忘れやすい、一時騒いでもすぐ忘れるから大丈夫という読みが、政権党や首相にあるのだろうが、それも一理ある。というのも、前回紹介した研究によれば、人な貧困状態になればIQが下がるからだ。つまり馬鹿になり判断力が鈍るというのは本当のことらしいからだ。国民が窮乏するような政策をして、国民から支持率を高める、これは、韓国、朝鮮、中国への憎悪や恐怖を掻き立て、高い支持を得る政策と並んで、たいへん賢い政策である。しかし、政府や安倍首相ばかり賢くなり、2度目の核発電所事故をはじめ、現政権が推進する政策によって国民が死に絶えては困るので、国民が賢くなり、現政権を支持せず、新しい選択と行動ができるために必要なことは何かを考えているときに、「最低所得保障制度」の話を聞く機会があったのだ。

 

私たちのように力の弱いものが、自民党や公明党のような盤石の巨大勢力に対抗できるのだろうか。1つには、弱い者同士の連帯や国家という枠組みを超えての国際的な連帯に力を借りるということだ。聞くに値するよい考えならどんどん広めていこうという主旨の外国の団体が、著名人や活動家、研究者にスピーチをしてもらい、そのスピーチは誰でも聞くことができるように公開されている。TEDと略称される、その2017の会議でベスト10にも入ったスピーチをしたのはRutger Bregmanさんという若い歴史家、ジャーナリストだ。貧困の研究をしていて、貧困を撲滅するための彼の結論は「最低所得保障制度」だ。広めるに値する考えだと思うし、日本国民がだめにされないためにも、最低所得保障制度は導入に値すると思うので、私も、彼の考えの概略を紹介したい。

 

まずは貧困に対する考え方を、われわれは変える必要がある。Bregman氏は「貧困とは人格の問題ではなく、現金の不足なのだ」という。どういうことかというと、実際に貧困状態に陥っている人は、偏った栄養のものを食べているので肥満になったり健康状態が悪かったりする。私たちは、それをそんな健康に悪いものを食べたりしたりしないで、きちんとした生活を送ればよい、つまり、本人がだらしがないからだとレッテルを貼る。つまり貧困は、その個人が悪いのだと決めつける。これは、日本でもおなじみの光景だ。日本維新の会の橋下さんという政治家が伸びてきたのも、この風潮と軌を一にする。生活保護をたたくことにより、人気を博し、これは自民党政権の人気にもつながってくる。しかし、貧困は個人が悪いのではなく、貧困だから、判断力が鈍り適切な判断ができなくなるのだ。だから貧困ラインよりすべての人が上に行けるように足りない現金を補う、つまり「最低所得保障制度」が必要だというのだ。

 

「最低所得保障制度」はうまくいくのか。実施してみてうまくいった例がある。カナダのDauphinというところで5年間実施してみた。その結果を専門家が分析してみると、人々は「より豊かに」「より賢く」「より健康」になった。子どもの学業成績は大いに上がり、家庭内暴力や精神疾患の訴えも減り、入院も減った。結局、「最低所得保障制度」は、社会の犯罪率が減るなどの恩恵も金持ちも受けるので、すべての人が満足できる制度、つまりwin=winの関係の制度だという。この世の中はゼロサムゲームの仕組みが多い、つまり「私が勝てば、あなたは損する」「あなたが勝てば、私は損する」の関係が多く、自民党や安倍政権が大きな支持を受けているのも、こういう対立をあおることによってなので、社会全体が幸せになれる制度である「最低所得保障制度」は一考に値する。

 

「最低所得保障制度」を実施するだけの予算がありっこないという批判もあるだろう。Bregman氏は、研究者の試算を引用する。たとえば、アメリカですべての人を貧困ライン以下から引き上げるには、軍事費の4分の1、GDPの1パーセントあればよいという。こうなれば、選択の問題だ。民主主義国家であれば、国家予算を何に使うかというのは、私たちの選択の問題である。Bregman氏は、貧困にかかわる巨額の損失を考えてほしいという。貧困による学校の中退率、高い犯罪率やそれに対する対策費などを考えれば、そして何より貧困が「人的資源の無駄遣い」と考えれば、「最低所得保障制度」は安いものだといえる。

 

根強い反対は、お金をあげたら人は働かなくなり、堕落するというものだろう。この考えも日本人は、自らをしばる考えとして好む考えかたであり、自民党に高い支持が集まる原因でもある。先ほどのDauphinで実施した例では、最低所得保障制度の下でも、人は働いたという。労働時間がわずかに下がったのは、赤ん坊を生んだ女性と、学生だけ。学生は修学年限が増えたからだ。そしてBregman氏はこんなことも言っている。今、調査をしてみると自分の仕事が好きだと答える人はわずか。つまり、いやいや長、生活費を稼ぐために働いていて、仕事に意義が見いだせずにいる人が多いということ。そこで、最低所得が保障されたら、どうだろう。本当にやりたいことがやれるのではないか。それこそ「人的資源の解放」ということになるのではないだろうか。


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