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2018年2月24日 (土)

雑感-読解力とは何か?

英文の読解を指導していてふと思ったこと。ちょうど、本年1月に行われた大学入試センター試験の英語の問題を高校生に向けて教える仕事があり、問題を解いていた。

センター試験の読解問題のねらいは、短時間に必要な情報を読み取るということだ。その中でも、発言者の一番言いたいポイントをつかむことができるか、という設問がある。テーマに沿って発言しているので、そのテーマに関して、発言者が最も強調したかったことや自説をつかむわけだから、たとえ、本発言中には触れられていても、些末な部分や具体例的なところにはこだおってはならず、あくまでも本筋を追うことができるかという読解能力を測る問題になっている。

今まで、私はこういう読解力を測る問題について、何ら疑問を持たずに来たが、生徒にとっては実はそうでもないということにようやく気付き始めた。もちろん、読解力や技術が未熟なうちは、どれも重要な情報に見えて取捨選択ができないということもあるが、問題としてもっと違うところを抱え込んでいる生徒たちもいるのではないか、ということに気付いたのだ。

ふつう、私たちは騒がしいパーティー会場でも、対面で会話している相手の話を聞き取ることができたり、後ろから呼びかけられれば気づいたりする。それは、脳が自動的に情報を取捨選択して、自分にとって必要な情報のみを取り入れているからだ。耳から入った情報が、すべて脳に入ってきたら、脳は音の洪水であふれ出して、苦しくてたまらない。ふつうの人はそうやって自然に、ノイズをキャンセルすることができるが、しかし、それができない人もいるということに、例えば東田直樹君の「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」という本を読んだりしてわかった。

本を読む、特に読解力を測る目的で試験として文章を読むということも、必要な情報だけを取り出すことで、不必要なこと、優先度が低いことは置き去りにして気にせずに読んでいくことだと、何の疑問も持たず私は考えてきたが、ある時生徒から「どうして今日の授業で、固有名詞の違いについて説明してくれなかったんですか、そこが不満です」と言われて、考えさせられた。英文中で出てくる固有名詞がとても重要な役割を果たすこともあるだろうが、大学入試で用いられる英文で、固有名詞がポイントになることはほとんどない。それは、そういう固有名詞を知っているかどうかを問う特殊な知識を問うことになり不公平だと考えるからだ。そういう特殊な知識がなくても、読解力という汎用的な能力を用いれば、読み進めていける英文しか使用しないからだ。だから、今まで、読解問題の指導で、固有名詞に気を付けて読みなさいという指導は一度もしたことはなかった。

さて、私がここで言いたいのは、その生徒を批判することでは決してない。私は、存在することをそのまま受け入れたいのだ。「普通」と自分たちのことを考えている私たちは、おそらく英文のミスプリント、例えば最初に出てきた固有名詞と2番目の固有名詞に1文字、違いがある、なんてことは気づかないだろう。そこは重要でないと、脳の中でキャンセルして、もしくは支障のないように補って読んでしまうからだ。ところが、ある特殊な才能を持った人や生徒はその違いに気づくのだ。何がいいのだろう。そして「読解力」って何だ、とわからなくなっている日々だ。


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