UA-92533382-1 岡本夏木著「子どもとことば」岩波新書: よつば農場便り

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2017年10月22日 (日)

岡本夏木著「子どもとことば」岩波新書

言語学研究の参考書として手に取った。岡本氏もこの本の中で言っているが、完成された言語を研究する言語学ではなく、あえて言葉以前の赤ちゃんがことばを話せるようになっていく過程を研究・観察するというのは独創的だと私も思ったし、第2言語習得や、言語障害に対する対応や教育にと応用ができる重要な研究分野だと思った。実際、本書で述べられている通り岡本氏は、自身も障害児の言語教育に携わったことがある実践家だ。

 

私が一番興味をひかれたのは、岡本氏が言葉の研究家として、そこから得られた経験や知識を基にして、教育への提言をしているところだ。子どもが書く詩や絵は時に大人をドキリとさせるくらい素晴らしい。ピカソは子供のように描けないと言って悔しがった。なぜ、子どもは時にそんなにも素晴らしい創造性を発揮するのか。それは、言葉創成の過程を自ら経験しているからだ。誰でも、言葉の創造の過程を経験しているはずなのに、言葉が一般化して、慣習的な言葉を使うようになるにつれ、創造性は矯められ、言語も絵画も平凡・陳腐に成り下がっていく。岡本氏はそのことを指摘して、そうならないような教育への提言をしている。それは本書を参考にしてほしい。研究と実践との有機的なつながりとして望ましいことだと思うし、幼児の言葉以前の言葉を研究している岡本氏らしい。

 

言葉を発しないのにどうやって幼児の言葉を研究するのだろうか。新書に記されている岡本氏の経歴を見ると京大で氏は哲学を学んでいる。そこで思いあったったのは、ハイデガーやフッサールなどの哲学だ。人と物の関係、社会の中の人間存在、そういう関係性を言葉でつなげていく。言葉を発しない赤ちゃんから原初的に見ていくのがとてもいい研究法だ。氏は西洋哲学を自身の研究に取り入れ独自の手法で研究している。だからと言って、専門用語等は極力使っていないので、読みやすい。

最後に紹介しておきたいのは言語を専門に研究している氏から、言語を職業としている人たちへの手厳しい批判だ。言葉を職業としている人たち、すなわち政治家や官僚の方々のむなしすぎる言葉を批判しているのだ。用事の言葉を研究し、その言葉の創造性に触れている氏には、言葉の虚しさ、白々しさが耐えられないのだろうし、私たちも他人ごとではなく、どうしたら生き生きとした言葉づかいを保てるのか、重い課題だと思う。

私も、愛国保守主義の同志に呼び掛けたいのだが、美しい日本語を守るためにも、これほど空しい言葉を連発し、日本語から言霊を抜き去る安倍首相に批判の声と輪を大きくしていきたい。


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