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2017年6月29日 (木)

森千香子氏の研究紹介 続き

ヨーロッパの移民研究をしている森千香子氏の講演を読む機会があったので、氏の研究を前回に引き続き紹介する。

氏はフランスでの移民研究により「セグリゲーション」が深く進行しているということを指摘している。セグリゲーションというのは分離や分断ということで、統合の反対ことばだ。氏は都市郊外にある移民集住地域を研究し、そこは平均所得が低く、主流社会に属するフランス人と移民が全く違う場所に居住していることを報告している。社会的に孤島化し、教育も医療も一人当たりの予算が低くなっているという。

このような報告の中で、私が明るさを感じたことは、ヨーロッパでは移民に関する研究者のネットワークがあり、ポピュリズムや排外主義に偏りがちな政策や世論に対して、実証主義に基づいて影響力を及ぼそうとしている点だ。これは、日本でも導入可能ではないだろうかと思ったのだ。たとえばドイツでは「難民を多く受け入れたけれども、同時に経済が成長した」という研究があるそうだ。貧しい移民が来ると困るという思惑とは逆に、実際は経済の活力を生み出したということを実証研究が示したということだ。

そしてフランスでも研究者の団体が、移民についての基本的な疑問に答えるという趣旨の本を出し、データを示しながらそれは正しい知識ではないということを示しているということだ。これはヨーロッパだけではなく日本でも、政府やメディア教育などへの働き掛けとして有効に活用できるのではないだろうか。日本でも、外国籍の人に対して、不当に特権を享受しているという正義感からの怒りが排斥運動を起こしていて、それがある程度社会の共感を呼び、安倍政権を支える力ともなっている。実証的なデータでそれは違うということを示せたら、安倍政権に吹いている追い風や高支持率も本当の水準にまで落ち着いていくのではないだろうか。


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