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2017年6月25日 (日)

森千香子「排除と抵抗の郊外」

森千香子氏という研究者は、フランスの移民集住地域に自ら出向き、移民が置かれている状況などを研究している方だ。表題の「排除と抵抗の郊外」という専門書を出版していて渋沢・クローデル賞特別賞などを受賞している。氏が大学のシンポジウムで講演した内容を読む機会があり、「移民」問題についての視点を得ることができた。以下は、その講演の内容の要約と私の感想を記す。

森氏は、移民やマイノリティーが都市空間の一地区に集住する、そのような集住地区がどのように形成されるか、それに加えて移民に対する排外主義を研究している。ヨーロッパでは1980年代から移民を排斥せよ声高の主張する政党が勢力を広げてきている。そしてそのような政党のリーダーたちの憧れの国が日本だ。たとえばフランス国民戦線の党首ルペン氏が日本の靖国神社に招待された時、「日本ほど移民をうまく排斥している国はありません」と絶賛している。

そういうわけで、私は森氏の研究は遠く離れたヨーロッパの研究というだけでなく、日本社会の現状や未来にも応用や寄与できる研究だと思い、興味を持ったのだ。

氏は講演の中でヨーロッパの政治は「ポピュリズム」が右にせよ左にせよ進んでいて(実現不可能ではあるが、大衆迎合的な大げさなことを言って民衆の人気を博するという点では右も左も同じポピュリズムだという)、今では西洋のリベラル勢力の最後の砦はドイツのメルケルだという論評も見られるという。しかし、メルケルは穏健な保守であって、そういう穏健な保守が民主主義の最後の擁護者とみなされるほど、ヨーロッパの右傾化は進んでいるということだそうだ。

これは今の日本にも当てはまると思った。いま私はしきりに昔の自民党は良かったと懐かしく思っている。良識のある保守政治家が多かった。これだけ世の中が右にシフトしまえば、昔の自民党の政治家がますます偉大に見えてくる。いまの石破さんさえ、良識のある穏健な保守政治家だと見えて、期待を寄せたくなるのが不思議だ。民主主義の擁護者がいまの日本には不在に思えて、昔の自民党の大物保守政治家の時代が懐かしい。ドイツのメルケルさんのように、アメリカのトランプ大統領に物申せる人は日本にいないように思える。

ヨーロッパでのポピュリズム政治の台頭、移民排斥政党の躍進の背景には格差拡大があるという。ただ、実証データで私が面白いと思ったのは、一番貧しい層は選挙で大半が棄権していて、少し上の層が排外主義政党に投票する行動が見られるということだ。日本でも、選挙の結果の実証的に分析した研究があるのだろうか、あれば私は知りたいと思う。日本では4割から5割の人たちが投票を棄権しているが、どのような層の人が棄権しているのか、どのような人たちが排外主義的な主張に共鳴しそのような政治家に投票しているのか、それがわかれば、選挙対策なり効率的なメッセージの送り方がわかり、今の政治状況を変えられるのではないかと思うのだ。

もう一つの要因は、所得税率のフラット化で、これはもちろん日本にも当てはまり、右傾化、ポピュリストたちの人気につながっているのではないだろうか。(まだ、森氏の講演の概要を紹介しきれていないので続きは次回に)


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