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2016年6月29日 (水)

方向が決まる

今の日本社会は移り行く過渡期だろう。今度の参議院選挙の結果ではそれがどのような方向に行くのかがひとつ示されることになる。理性的な対話を拒みこの道しかないと言い募る力強く頼もしく見えるリーダーに多くの国民がついていくことになるのか。

さて、その選択をする際にこんな現場の声を聴いてほしいという呼びかけが、特に若い有権者に向かっての呼びかけが6月23日付の河北新報に掲載された。筆者は建築家の山本理顕氏だ。

例えば建築現場の溶接という仕事は美しく仕上げられるようになるまで10年かかる。出来が美しいかどうかは強度にかかわり、彼らの仕事の技量はこのように大切なのであるが、対価が十分に支払われていない。それは最末端の下請け仕事だとみなされているからだ。それに対しいまゼネコン(大建設会社)は政府の経済成長戦略に乗り大きな利益を上げている。その儲かる仕組みは受注を増やす=公共工事などを増やすとともに、原価圧縮、つまり下請けに対するコストカットである。利益を上げ株主に還元する。優れた仕事をするよりは見かけの利潤を上げることが優れた企業であると称賛される。

溶接に限らず組み立て、鉄筋、型枠などの日本の現場技術の技術力は山本氏に言わせると世界でトップクラスとのこと。日本の建築技術が世界でも優れているのは、彼らが単に金銭だけのために働いているわけでなく、美しいものを作りたいという彼らのプライド、すなわち美学のためだという。

どうだろう、ぼくなどは保守的価値観の持ち主で、日本の伝統文化や心意気を大事にしたいと思っているので、この一文には泣かされる。

だが、山本氏が言うには、このプライドだけが守ってきた現場のモラルや心意気ももう限界だという。コストカット、つまりピンハネしているのは彼らの工賃だけでなく、彼らのプライドもなのだという。考えられないようなくい打ちの長さ不足や橋梁事故はここに起因し、それは働く人に敬意を払うという政治家としての最低のモラルも失われてしまった結果だという。

多くの社会人が共感してくれないだろうか。なぜ、自分は仕事をしているのだろうか。それはもちろん金銭を得るためだということもあるが、美しい仕事をしたいとか、誇りを持って仕事をしたいとか、美学とかモラルとかやりがいだとか、案外そういう部分が仕事の大事な側面だということを、働いている人なら共感してくれると思う。と同時に、もうそれもこれでは限界と感じるときはないだろうか。現場を支えている優れた日本の現場力が失われようとしている。それは本当は我々が選択する社会のありようと大きくかかわっているのだ。

山本氏は最後に若い有権者にアドバイスする。天下国家のこと、経済成長のことしか言わない政治家を決して信用してはならないと。

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