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2015年10月 1日 (木)

松竹シネマ歌舞伎「海神別荘」

歌舞伎座公演を映像に収めて、映画のように劇場公開している。もちろん、生の舞台は見たいが、だが、こちらの方も映像特典もあるし、なかなか見ごたえがある。坂東玉三郎さんは、泉鏡花の作品にとても思い入れがあり、いくつかを舞台化して演じている。シネマ歌舞伎では、まず冒頭で玉三郎さんによる鏡花作品の解説や、ご自分の鏡花作品に対する解釈なども聞けて、舞台に対する私たちの理解を深めてくれる。着物を着ていない玉三郎さんもとても素敵だ。こんな歌舞伎のスーパースターと同時代で生きて、その人を拝見できるというだけでも幸せなことだ。

鏡花の「海神別荘」は幻想的な作品だ。だからこそ、これを見て「これは歌舞伎なのか?」という思いが湧く。玉三郎さんは「歌舞伎に対して、新派というのが出てきたのだけれど、本当は旧派も新派もないのだ」と、述べていた。確かに、その通りで、あるのは良い芝居とそうでない芝居だけだろう。だが、これを歌舞伎の本拠地歌舞伎座でやるというのは、なかなかの挑戦だと思う。映像では、舞台稽古の場面なども写っていたが、そこで玉三郎さんが入念に作りこんでいるのがわかり、やはり玉三郎さんの思いの強さを感じることができた。

三郎さんが演じる人身御供にされた姫と、海老蔵演じる海神の王子の美男美女や、幻想的な舞台は見ごたえがあった。そこで鏡花の台本について思ったのだが、知が勝りすぎていると感じた。海の底の海神たちの価値観を通じて、人間世界の欲得を描こうとしたのかもしれないが、近代芝居にありがちな、理屈まさりのようにぼくには思えた。理を超えたところの情や運命など、どうにもならない大きなものに押し流される古典的な歌舞伎芝居もあらためて見たいし、そういうものに価値があるのだと思った。ただ、「海神別荘」のような挑戦がなければ、そういう古典の価値にも気づかないわけだから、玉三郎さんの挑戦も、もっともっと見てみたい。

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