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2015年3月23日 (月)

外国語学習の科学

日本人は英語ができないというコンプレックスを持っている。そういうコンプレックスにはつけ入る隙がたくさんある。だから、「これさえやれば、10日で英語がペラペラ」「何もしなくても、ただ聞いていれば、たちまちわかるようになる」といった類の本や教材が売れることになる。詐欺に引っ掛かる人のことを考えれば、そんなおいしい話などそう世の中に転がっているはずはないと気づくはずだが、この手の楽してすぐに身に付くというのは、抜きがたく人の欲望に基づいたものなんだなと思う。

では、「科学的に」言って、本当に効果的な外国語学習方法はあるのか?それが、ぼくも仕事柄ずっと気になっていたところだ。そもそも人間は、自分の成功体験の中からだけでしか語れない。だから、ある人が、他に何もやらず、これだけやって成功した、というのは本当かもしれないが、果たしてそれが別の人に効果があるかどうかは分からないし、実証しなければならないことだ。高校の時の部活動に、いろいろなOBが顔を出して指導してくれていったが、それぞれ言っていることが違って結局誰の何を信じていいのかわからず、混乱してしまったっ経験を思い出す。語学の世界も、それに似たようなもので、それぞれの人が自分の狭い成功体験だけから、それを絶対化して学習者に話す。本当は、各人に合った勉強法は人の数だけ多種多様なはずで、自分に合った勉強法は自分で見つけるしかないはずだ。

そんな時に、岩波新書『外国語学習の科学』白井恭弘・著を読んだ。自然科学の分野では科学的な実験や実証の方法が進んでいるが、社会科学の分野でも、近年、科学的な実証が進んできていて、外国語を習得することについての様々なことが分かってきている。全てが分かってしまったわけではないが、ただ個人の成功体験からだけ述べられた何の根拠もない勉強法や、昔からそうしてきたからというこれまた何の根拠もない勉強法よりも、効果があるとかないとかが科学的に実証されているものを採用した方が、効果もあるだろうし、時間も金も無駄遣いしない。ぼくが宣伝しなくても、この本はずいぶん売れているみたいだが、やはりぼくも読んでみて大変勉強になった。おすすめである。

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コメント

語学学習について科学的実証が進んでいるというお話を興味深く拝見しました。自分の経験を絶対化して他人に伝えるという手法は外のことにも通じているような気がします。例えば健康法とか蓄財法とか・・・
いつも本のご紹介ありがとうございます。早速読んでみます。

投稿: まゆ | 2015年3月24日 (火) 09時07分

そうですね、健康法とか、蓄財法とか、本当にいろいろありますけど、例えば、蓄財法とかは、その本を書いた人だけはもうかるでしょうが、読んだ人全員はカモにされるだけで、儲かるとも思えません。

この『外国語学習の科学』は、本当にお勧めです。ぼくも、生徒を二つのグループに分けて、ひとつはこの方法で、ひとつはこの方法を使わないで教えたら、成績にこれだけの差があった、という実証的な研究をしたいと思っています。

投稿: 原田 禎忠 | 2015年3月25日 (水) 17時38分

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