UA-92533382-1 講談社ブルーバックス『やさしい統計入門』: よつば農場便り

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2014年4月12日 (土)

講談社ブルーバックス『やさしい統計入門』

統計学の初歩を勉強しています。よく言われるように、これからの市民社会はいろいろなことに関して、市民一人一人が「リテラシー」=『読み書き能力』を持つ必要があります。そうでないと、民主的な市民社会は成り立たないからです。民主的な市民社会の反対は、一部の人たち、とくに支配者層が、知識と情報を独占する社会です。支配の大事な要素は、軍事力・警察力や暴力といった強権的な要素ももちろん必須ですが、高度に社会が発達すればするほど、知識と情報の独占が都合の良い大衆支配の道具となります。それを許さないために、この社会を成り立たせていることに関して市民ができるだけ多くのことに関しての「リテラシー」=『読み書き能力』を持っている必要があります。読み書き能力は、もちろん昔ながらの読み・書き・そろばんに限りません。マス・メディアの情報を鵜吞みにするのでなく、メディアが現代社会ではどういう特質を持ち、どういうことを報道しがちであるのかを読み解く『メディア・リテラシー』や、そのほか『コンピューター・リテラシー』や「科学・リテラシー」「医療、健康・リテラシー」などなど、権力の独占に対して市民が持つべきリテラシーは幅広いです。

さて、講談社ブルーバックス『やさしい統計入門』から、興味深い記事をひとつ紹介します。それは、同書189ページに「人間がデータを捏造すると、捏造の程度を知らぬうちに過大評価する」という表題で紹介されています。どういうことかというと、1960年代に新潟県の阿賀野川流域に水俣病患者(=有機水銀中毒患者)が出たという報道がされました。原因と目されていた企業は当然、わが社のせいでないとデータを使って否定しなければなりません。そうでないと、賠償金など企業として責任を負わなければならないからです。そこで、その企業は何をしたか。まず、阿賀野川流域に住んでいる人の頭髪に含まれている水銀の割合を調べます。ここではグラフを載せられないのですが、0ppmの人の頻度が70パーセントで始まり50ppmの人の頻度が8パーセントくらいと低下していってほとんどゼロパーセントになっていくのですが、150ppmのところで少し島があり、3パーセントくらい現れるのです。

このデータからだけでは、何も言えないので、当然比較対象地域の人々のデータを取ります。具体的には、富山県神通川流域、岡山県旭川流域、高知県物部川流域です。そして、そのデータが、阿賀野川流域のデータの現れ方とほとんど同じなのです。ということで、企業の人は、他の箇所の人々に含まれる頭髪の水銀データが同じでありながら、他の箇所では病気は出ていない。よって阿賀野川の患者は、水銀のせいじゃない、わが社は無関係である、ということです。素人も、これほど見事に一致するデータを見せられれば、阿賀野川に特有の水銀以外の原因がある、と思います。

ところが、「統計学」というのはそういうことではないのだそうです。無関係の場所で取られたデータが一致する確率や離散する確率を推計する計算式や方法論を持っているので、データがこれほど見事に一致するというのは、むしろデータを捏造した可能性が高いということだそうです。そして阿賀野川の公害事件で、誰が正しかったのかは、歴史が証明しています。

さて、話を現在に戻しますが、福島県で現れている小児甲状腺がん患者の発生割合が、比較対象地域の他県のデータと比べて特に特異なものでないので、福島県の小児甲状腺がんの発生と原発事故は一切関係がないと、先日環境省が発表しました。阿賀野川公害事件の対象地域に、神通川を選んでいることに何か作為を感じてしまいますし、福島の対象地域には、山下教授のおひざ元、長崎県が選ばれています。さて、ここからは市民側の粘り強い「検証」が必要になって来るでしょうし、歴史という名の裁きが誰に下るのかもしっかり見ていかなければなりません。

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コメント

 阿賀野川流域の公害事件とはまったく次元の異なる事柄に属しますが、以前カマキリの産卵場所から冬期の積雪深を予測したという論文が話題となりました。この論文が根拠のないものだということは、毎年カマキリの卵をうんざりするほど見ている者からすれば直ぐに判ることです。カマキリは地上すれすれの位置に卵を産むのがほとんどで、なかにはヒトの頭より高いところに産むカマキリもいます。要するにカマキリは行き当たりばったりで産卵しているだけで、積雪とは何の関連もなかったのでした。
 良くないことに、その論文を読んで絶賛した「専門家」がいたのです。その「専門家」は業界では名の知れた方ですが、とんだ汚点となったことは間違いありません。
 統計学も使い方を誤るととんでもない方向に導かれるということを再認識しました。

投稿: まゆ | 2014年4月15日 (火) 21時39分

まゆさん、コメトありがとうございます。統計という学問の技術はとてもすごいし、どんどん進化・進歩しているようです。でも、悲しいことにぼくにはやはり本書に書いてあった数式がよくわかりませんでした。数式は分からずとも、大事なところだけは押さえておきたいと思います。

投稿: 原田 禎忠 | 2014年4月20日 (日) 11時03分

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